黄色の衣裳は着ない?
text yuka
フラメンコにおいて黄色の衣裳はNG ..とかなんとか。そう思われている方もいらっしゃるかも知れません。
黄色は有彩色の中で一番明るい色で、元気の出るビタミンカラー。風水での黄色は金運をアップさせる幸福色、などなど。
東洋ではポジティブなイメージの黄色ですが、キリスト教圏では忌み嫌われる色としての歴史がありました。大昔、中世の宗教絵画において黄色は「イスカリオテのユダの色」として使われました。
『最後の晩餐』(レオナルド・ダ・ヴィンチ)や『ユダの接吻』(ジョット)では、イエスを裏切ったユダは黄色の服で描かれています。キリストを裏切ったユダを指す色とし、ユダヤ人やイスラム教徒を排除する目印に利用されたことから、その後アウトサイダーや堕落した者のレッテルとして使われました。
罪人の家の門やドアは黄色く塗られ、娼婦には黄色の服を身につけさせ、社会的差別の手段としてユダヤ人に黄色の服や印を身につけさせ、スペインでは異端者が黄色の服を着せられて刑に処されました。
フラメンコは古いものなので、こういった歴史の名残があるのだと思います。
そもそもなぜ黄色が蔑まれてきたのか諸説あるようですが、中世の頃は発色の良い黄色の顔料がなく、安価な「濁った黄色」だったためマイナスイメージに用いられるようになった。黄土色という意味のfauve(フォーヴ)が「裏切り」という意味を含んでいたから、などといわれているようです。
現代においては古き因習に過ぎません。気にしたい人は気にすればいいし、気にしない人は気にしなくて良いと思います。
個人的には、そもそも色というのは人によって見え方は違うと思っているので、色の印象は場合によっては無意味です。自分にとって色の持つ意味やイメージは大切であっても、人からどう見えるかは問題ではありません。
したがって、黄色の衣裳がNGとは思いませんが、フラメンコにおいて、こういった黄色の持つ歴史を知っておくことは大切ですね。